• 現場だより

2022年の病害虫発生状況を振り返って

早いもので2022年も間もなく年末を迎えようとしております。
皆様におかれましては、本年もご愛顧賜りましたことに深く御礼申し上げます。

今年もさまざまな病害虫に悩まされた一年でした。
こちらのコーナーでは来年の皆様の防除活動に少しでも役立てますよう、今年の全国的な病害虫発生状況を振り返りながら、特に目立った病害虫と防除対策についてご紹介したいと思います。

2022年の病害虫発生注意報・警報・特殊報の発令状況(12月16日現在)

注意報:125件 警報:0件 特殊報:72件(全都道府県)

注意報や特殊報の発令数は昨年(2021年)と同水準でした。
作物別に見ますと、注意報は稲で38件、野菜類で35件、果樹類で31件発令され、特殊報は野菜類で過半数となる40件、果樹類では11件発令されました。

以下では今年注意報や特殊報の発令対象となった病害虫の中でも、発令数の多さや病害虫としての重要性を考慮した上で、注目すべき3種をピックアップしてご紹介いたします。

2022年の病害虫3選

<その1 果樹のカメムシ類>

発令数:27件 主な発令時期:5~8月 発令の多かった地域:関東以西、特に中四国地方

かき、なし、ぶどう、かんきつをはじめ、多くの果樹類で発令されました。
カメムシ類は数多くの植物を加害する害虫ですが、果樹類では果実を直接吸汁するため果実が傷ついたり、落果が誘発されるリスクがあります。

果樹類に発生するカメムシは主にチャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシ等です。発生時期は一定でなく、被害程度も年によって大きく異なりますが、8月以降発生の多かった地域は越冬量も増える傾向ですので、翌春の発生動向に引き続きご注意ください。

果樹のカメムシ類対策として、弊社では園芸殺虫剤の「ダントツ水溶剤」をお勧めしております。
本剤は浸透移行性と効果の持続性に優れ、また多くの果樹に登録を有するため、使い勝手が良く便利な製品です。
なお薬剤防除に当ってはカメムシに薬液が直接かかるよう、果樹園に侵入する早朝もしくは夕刻の散布が効果的です。

  • クサギカメムシ

  • チャバネアオカメムシ

  • なしのカメムシ吸汁被害

<その2 斑点米カメムシ類>

発令数:22件 主な発令時期:7~8月 発令の多かった地域:東北・北陸地方

斑点米被害を引き起こすカメムシ類は、地域によって発生の多い種類が異なります。
東北地方ではアカスジカスミカメやアカヒゲホソミドリカスミカメ等小型のカメムシが多く、関東以西ではクモヘリカメムシ、ホソハリカメムシやイネカメムシ等、比較的大型のカメムシ発生が目立ちます。

それぞれのカメムシが稲を加害する時期や程度は異なりますが、本田では穂揃期~乳熟期、さらに10日前後経過した乳熟期~糊熟期が重点防除時期とされています。

斑点米カメムシ類対策として、弊社では本田殺虫剤の「ダントツH粉剤DL」や「ダントツフロアブル」等のダントツ剤をお勧めしております。また、「アミスタートレボンSE」や「ノンブラスバリダダントツフロアブル」等の殺虫殺菌剤は、いもち病をはじめとする水稲病害との同時防除が可能で、ドローン散布にも対応しております。

なお、発生するカメムシ類が小型のカスミカメ中心であれば、水稲育苗箱用殺虫殺菌剤の「デジタルメガフレア箱粒剤」を施用することで、穂揃期におけるカメムシ類防除の省略が期待できます。カメムシ類発生状況にもよりますが、本田での省力化が可能な製品ですので地域の指導機関にご相談の上でご活用ください。

ちなみに、斑点米カメムシ類は水田内や畦畔・隣接地に生える雑草(特にイネ科雑草)でも増えるため、除草作業も非常に大切です。但し、水稲出穂間近の除草は逆に稲への飛び込みが増えますので、出穂の概ね2週間前までには除草を完了させましょう。

  • アカスジカスミカメ

  • イネカメムシ

  • 斑点米

<その3 かんしょの基腐(もとぐされ)病>

発令数:8件 主な発令時期:通年 発令の多かった地域:近畿以西のかんしょ産地

2018年に国内で初めて発生が確認された、かんしょ(さつまいも)の重要病害です。株の立ち枯れや、いもの腐敗により大幅に収量の減少する懸念があります。

基腐病は感染した種いもや苗、さらには病原菌に汚染された土壌を通じて広がります。本圃において、かんしょの生育が旺盛な時期は症状に気づきにくく、また、病原菌による土壌汚染が進んでからの対策は困難ですので、防除対策は圃場に病原菌を
 ①持ちこまない ②増やさない ③残さない ことが基本となります。

弊社では現在、上記対策のうち、圃場に「病原菌を持ち込まない」ための種いも・苗消毒や、植え付け後、本圃で「病原菌を増やさない」ための薬剤防除に対応した製品の取り扱いがございます。

かんしょの採苗用種いも消毒に対応:トップジンM水和剤
かんしょの苗消毒(苗基部浸漬)に対応:トリフミン水和剤
かんしょ本圃における薬剤散布に対応:トリフミン水和剤ジーファイン水和剤

基腐病を根本的に防除するためには農薬を含めて複数の防除手段を組み合わせることが不可欠です。

なお、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)のホームページ上では、かんしょの基腐病防除に関わる生態的・技術的な情報が公開されておりますので、本病害への対策を検討される上で是非、ご参考にしていただければと思います。

(参考)農研機構 技術紹介パンフレット サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策(令和3年度版)

  • かんしょの茎葉基部に発生した基腐病※

  • いもに発生した基腐病※

※鹿児島県農業開発総合センター提供

 

上記3種を除く病害虫では、水稲のいもち病やたまねぎのべと病等の注意報が多くの地域で発令されました。一方、昨年九州への侵入が確認されたトマトキバガは今年、さらに中四国や近畿地方での発生が確認されております。現時点で大きな被害は報告されておりませんが、今後の発生動向に注意すべき害虫です。

弊社ホームページでは全国の病害虫防除所からの注意報・警報・特殊報発令情報を随時更新しておりますので、地域の病害虫発生状況のご確認にお役立ていただけますと幸いです。
(参考)協友アグリ㈱ホームページ 病害虫発生情報

 

最後になりましたが、皆様におかれましては良いお年をお迎えくださいますように、また来年も変わらぬご愛顧を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。