ウワバ類
- 分類
- チョウ目、ヤガ科
- 学名
-
- Autographa nigrisigna(タマナギンウワバ)
- Trichoplusia ni(イラクサギンウワバ)
- Thysanoplusia intermixta(キクキンウワバ)
- Anadevidia peponis(ウリキンウワバ)
- 英名
-
- beet semilooper(タマナギンウワバ)
- Cabbage looper(イラクサギンウワバ)
- chrysanthemum golden plusia(キクキンウワバ)
- Cucumber Looper(ウリキンウワバ)
【おもな加害作物】
-
タマナギンウワバ
ダイズ、ダイコン、ハクサイ、キャベツ、カリフラワー、レタス、ホウレンソウ、リンゴなど。
-
イラクサギンウワバ
トマト、ピーマン、ナス、ダイコン、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、ネギなど野菜類、キク。
-
キクキンウワバ
インゲン、イチゴ、ニンジン、シソ、カンキツ、キクなど。
-
ウリキンウワバ
キュウリ、スイカ、カボチャ、ユウガオなど。
【生態】
-
タマナギンウワバ
卵は乳白色の饅頭型で、直径0.6mm程度。1卵ずつ産付され、ヨトウガのように卵塊状にかためて産卵しない。孵化が近くなると黒化する。幼虫は淡緑~黄緑色で、体形は頭部に向けて細くなる。ヨトウムシ類は腹脚が4対あるのに対して、本種は2対であり、シャクトリムシ状の歩き方をする。5~6齢を経過し、終齢幼虫の体長は40mm程度。植物上で葉を巻くなどして繭を作り、その中で蛹化する。比較的冷涼な地域で発生することが多く、過去には高冷地のキャベツ畑で大発生したことがある。休眠性は持たず、年に4~5回発生を繰り返す。メス成虫が葉裏に1卵ずつ産卵する。幼虫は主に外葉を摂食し、キャベツの結球部などへの加害は見られない。春と秋に発生するが、春の発生はごく少量で秋の発生が最も多い。幼虫は12月に入っても見られる。
-
イラクサギンウワバ
もともと暖地から熱帯に分布する昆虫で、わが国の分布の記録は北海道~九州まで全国各地にある。フェロモントラップによる調査では、各地で成虫の誘引は認められる。近畿地方では春先に誘引される個体はタマナギンウワバが主体で、6月下旬~7月上旬を境に本種の誘引が主体となる。九州ではタマナギンウワバの発生がほとんど認められず、本種の発生が主体となる。
-
キクキンウワバ
春~秋に2~3回発生する。幼虫は淡緑色で、老熟すると体長40mmになる。シャクトリムシのように歩く。蛹は葉を糸でつづり合わせた繭の中にいる。
-
ウリキンウワバ
卵期間は4~8日、幼虫期間は2~3週間、蛹期間は8日~2週間で、適温条件では1ヶ月で次世代が出現する。年間の世代数は4~5世代で、露地栽培では9月頃から被害発生が増大する。
【被害】
-
タマナギンウワバ
どこでも発生するが、山間部や高冷地で多発生する場合がある。若齢幼虫は表皮を残して葉肉のみ食害し、葉裏に白い被害痕が点々と見られる。3齢幼虫以降は中肋や太い葉脈を残して食害し、葉に穴を生じる。主として外葉を食害する。多発生した場合は、被害が大きい。晩夏〜初秋に被害が目立つ。アブラナ科ではキャベツ類のように比較的葉が硬い作物での発生が多いが、ヨトウガのように幼虫が結球部に食入する事はない。
-
イラクサギンウワバ
加害の様子はタマナギンウワバと同様で、加害作物の範囲が広く、食害量が多いことから大きな被害に結び付く。幼虫の形態はタマナギンウワバに酷似しているため、混同されている場合も多いと考えられる。
-
キクキンウワバ
大発生することはあまりないが、終齢幼虫は大きいため、食害痕は目立つ。
-
ウリキンウワバ
若齢幼虫は葉裏から表皮を残して食害し、葉に小孔を開ける程度である。中齢幼虫になると葉の周縁部からも食害するようになり、食害量も多くなる。
-
タマナギンウワバ
外葉の葉裏に単独で生息することが多く、若齢幼虫による外葉の食害痕に注意し、殺虫剤を散布する場合は、発生の初期に外葉の裏に届くようにていねいに散布する。大規模産地では交尾阻害を目的とした性フェロモン剤を設置して、交信攪乱による密度抑制が可能である。 フェロモントラップによる発生予察も可能で、地域の病害虫防除所などが提供する発生情報を入手して発生状況を把握する。
-
イラクサギンウワバ
有機リン剤に対する感受性が著しく低く、合成ピレスロイド剤に対する感受性が極めて高いという報告がある。それ以外はタマナギンウワバと同様である。
-
キクキンウワバ
葉裏にいることが多いので、葉裏まで薬剤が届くように散布する。
-
ウリキンウワバ
殺虫剤に対する感受性は高く、他害虫の防除が行われていれば問題になることは少ない。施設では開口部を寒冷紗で覆う。