アザミウマ類

ヒラズハナアザミウマ成虫(ヒラズハナアザミウマ)

分類
アザミウマ目、アザミウマ科
学名
  • Thrips tabaci(ネギアザミウマ)
  • Frankliniella intonsa(ヒラズハナアザミウマ)
  • Frankliniella occidentalis(ミカンキイロアザミウマ)
  • Thrips palmi(ミナミキイロアザミウマ)
英名
  • onion thrips, cotton seedling thrips(ネギアザミウマ)
  • flower thrips, Eur opean flower thrips(ヒラズハナアザミウマ)
  • western flower thrips(ミカンキイロアザミウマ)
  • melon thrips(ミナミキイロアザミウマ)

【おもな加害作物】

  • ミナミキイロアザミウマ

    イネ、ジャガイモ、ダイズ、ピーマン、トマト、ナス、ウリ類、ホウレンソウ、ブドウ、イチジク、マンゴー、キク、シクラメン、カーネーションなど。

  • ネギアザミウマ

    ダイズ、インゲン、ナス、ピーマン、トマト、ウリ類、キャベツ、ネギ、アスパラガス、イチゴ、カンキツ、イチジク、キク、トルコギキョウ、バラ、カーネーションなど。

  • ヒラズハナアザミウマ

    ダイズ、ピーマン、ナス、トマト、ウリ類、ネギ、イチゴ、カンキツ、ウメ、カキ、イチジク、キク、トルコギキョウ、バラ、カーネーションなど。

  • ミカンキイロアザミウマ

    サツマイモ、ダイズ、ピーマン、ナス、トマト、ウリ類、ネギ、レタス、ホウレンソウ、イチゴ、カンキツ、モモ、スモモ、ブドウ、カキ、キク、トルコギキョウ、シクラメン、カーネーションなど。

  • 幼虫(なす/ アザミウマ)幼虫(なす/ アザミウマ)
  • 幼虫(ミナミキイロアザミウマ)幼虫(ミナミキイロアザミウマ)
  • 成虫(ネギアザミウマ)成虫(ネギアザミウマ)
  • 成虫(ミナミキイロアザミウマ・雌)成虫(ミナミキイロアザミウマ・雌)

【生態】

  • ミナミキイロアザミウマ

    成虫の寿命は20~30日。キュウリでは100個程度の卵を産下する。産雄性の単為生殖もおこない、交尾しないとオスになる卵を産み、交尾した場合はメスの比率が7~8割に高まる。卵は1 個ずつ植物組織内に産み込まれ、孵化した幼虫が植物表面を加害する。老熟すると地表に落下し、土壌間隙で前蛹(3齢)、蛹(4齢)になる。一般の昆虫と異なり、前蛹、蛹とも歩行可能。25℃では1週間程度で1世代を完了する。

  • ネギアザミウマ

    休眠性を持たず、関東以西の暖地では寄主植物上で成虫・幼虫が越冬している。以前は我が国には産雌性の単為生殖系統のみが分布していたが、国内でオスが発見され、現在は雌雄両方が見られる。春早くから活動を始め、梅雨明けから夏にかけて多発する。夏期は2 週間程度で1世代を完了する。

  • ヒラズハナアザミウマ

    一般に、露地では成虫のステージで越冬し、年間十数世代発生する。夏期は3週間程度で1 世代を完了する。メス成虫は褐色~黒褐色、体長は1.3mm程度。オスはやや小さい。

  • ミカンキイロアザミウマ

    メス成虫の体長は1.4 ~ 1.7mm。体色は黄色~褐色と変異が大きい。オスの体長は1.1mm程度とやや小ぶり。産卵から発育の過程は他のアザミウマ類と同様で、25℃では2週間程度で一世代を完了する。未交尾雌が産下した卵はすべてオスになり、既交尾雌の卵からはメスとオスが生ずる。メス成虫の寿命は30 ~ 45日で、産卵数は150 ~ 300卵程度である。

【被害】

  • ミナミキイロアザミウマ

    口器で植物体に傷をつけ、吸汁する。多発すると葉は初めかすり状となり、さらに葉全体が黄変して枯れる。若い葉は萎縮奇形する。ナス、ピーマン、キュウリでは果実被害が発生する。果梗、へたを加害するほか、へたと果実の隙間に潜んで果実を加害するため、果実の肥大に連れて食害痕が筋状に伸長する。本種はトマト黄化えそウイルス(TSWV)、メロン黄化えそウイルス(MYSV)、トウガラシ退緑ウイルス(CaCV)、スイカ灰白色斑紋ウイルス(WSMoV)などを媒介する。

  • ネギアザミウマ

    ネギ、タマネギでは被害は普通に見られ、多発した際は葉に白いかすり状の食害痕が無数に生じる。キャベツでは結球部にゴマ症状を発生させるほか、食害部分にカルスが形成することで品質低下をもたらす。本種はトマト黄化えそウイルス(TSWV)、アイリス黄斑ウイルス(IYSV)などを媒介する。

  • ヒラズハナアザミウマ

    ピーマンでは葉や花、若い果実が加害され、かすり状の傷がつく。果実の症状は時間がたつと黒褐色の傷となり、品質が著しく低下する。トマトでは果実への産卵痕が白ぶくれを引き起こす。イチゴでは、幼虫が花托と痩果の隙間に潜り込んで加害するため、花托の褐変や痩果が浮き上がって見えるようになる。本種はトマト黄化えそウイルス(TSWV)、インパチェンスえそ斑点ウイルス(INSV)などを媒介する。

  • ミカンキイロアザミウマ

    成虫・幼虫が花・葉・若芽を加害するため、かすり状の斑点を生じ、多発した場合は奇形も生ずる。メス成虫の卵巣成熟のためには花粉の摂食が必要で、成虫は花器に集まる。本種はトマト黄化えそウイルス(TSWV)、インパチェンスえそ斑点ウイルス(INSV)、キク茎えそウイルス(CSNV)などを媒介する。

  • ミナミキイロアザミウマ

    薬剤感受性が低いため、薬剤散布のみでの防除は困難である。栽培施設周辺の雑草除去や前作物の残渣処理を徹底する。ハウスの被覆資材に近紫外線カットフィルムを用いると、施設内への侵入を抑制できる。

  • ネギアザミウマ

    国内で産雌性単為生殖系統だけが発生していたころは、薬剤感受性が高く防除は容易であったが、オスが見られるようになってから感受性低下事例が多く報告されている。黄色粘着トラップに誘引されるので、施設開口部付近にロールタイプの粘着トラップを展張すると施設内への侵入を抑制できる。

  • ヒラズハナアザミウマ

    多発してからの薬剤防除は困難である。周辺の雑草を除草するとともに、施設の外周に光反射資材を展張すると飛来侵入を抑制できる。ハウスの被覆資材に近紫外線カットフィルムを用いると、施設内への侵入を抑制できる。

  • ミカンキイロアザミウマ

    多発してからの薬剤防除は困難である。周辺の雑草を除草するとともに、施設の外周に光反射資材を展張すると飛来侵入を抑制できる。ハウスの被覆資材に近紫外線カットフィルムを用いると、施設内への侵入を抑制できる。卵巣成熟に花粉が必要なため、花き栽培では収穫しない花は花粉ができる前に除去することを徹底すると次世代密度の抑制につながる。

ディアナ®SC

速効的に効果を発揮します。アザミウマの各発育ステージに効果があります。浸達性があるので葉裏にも効果が期待できます。アザミウマ類以外にチョウ目害虫、ハモグリバエ類、コナジラミ類に有効です。

主な登録作物

  • ミニトマト・トマト
  • きゅうり
  • なす
  • ピーマン
  • メロン
  • いちご
  • ほうれんそう
  • キャベツ
  • はくさい
  • にら
  • たまねぎ
  • ねぎ

ダントツ®水溶剤

速効性と残効性に優れます。浸透移行性・葉面浸達性を有するので新芽や葉裏への効果を期待できます。アザミウマ類以外にもハエ目、コウチュウ目、チョウ目、バッタ目、カメムシ目の各種害虫に高い防除効果を発揮します。訪花昆虫への影響があるので散布タイミングに注意が必要です。

主な登録作物

  • きゅうり
  • なす
  • ピーマン
  • メロン
  • キャベツ
  • にら
  • ねぎ

トスパック®

タイリクヒメハナカメムシを有効成分とする天敵昆虫製剤です。アザミウマの成虫と幼虫を捕食します。施設のみに使用可能です。圃場内での増殖に時間がかかりますのでアザミウマ類の発生初期に使用するのがおすすめです。導入後は影響の少ない薬剤を選ぶ必要があります。

主な登録作物

  • ミニトマト・トマト
  • きゅうり
  • なす
  • ピーマン
  • メロン
  • いちご
  • ほうれんそう
  • キャベツ
  • はくさい
  • にら
  • たまねぎ
  • ねぎ